Loke.

Column

Vol.1
植物と神話

〜そのとき、マリアが純粋で非常に高価なナルドの香油を1リトラ持って来て、 イエスの足に塗り、自分の髪でその足をぬぐった。家は香油の香りでいっぱいになった〜

古く神話や言い伝えには、様々な植物が登場しますが、上記聖書の一説より、マグダラのマリアがイエスの足をぬぐったという”ナルドの香油”はスパイクナード という植物(※ヒマラヤ山脈の麓原産で、雪花石のつぼに保存されていた希少で珍重された薬草)の精油 のことだと言われています。緑色の、とても深く深淵な香りがします。 当時、ナルドの香油は大変に貴重なものでした。
マグダラのマリアがイエスの足を拭った1リトラは一年分の収入とも言われます。
また、当時、女性が髪をほどいて、男性の足を拭うなど、あり得ないことで、マリアの、イエスへの想いを表しているロマンチックな描写にも感じられます。

現在もスパイクナードは精油として使用され、「足の裏に塗って寝ると夢からメッセージを得られる」など、 現在もなお神秘的なイメージを持ち合わせています。

また、スパイクナードのほかに、イエスキリストについて語るときに外せない植物は、
・Frankincense フランキンセンス
・Myrrh ミルラ
です。フランキンセンス、ミルラは、乳香(にゅうこう)と没薬(もつやく)のことで、 イエスキリストの生まれた際に東方の三博士が捧げた3つの贈り物が黄金、乳香、没薬でした。

十字架にかけられたイエスに、ミルラを混ぜたワインを渡したという話もありますし、
古代エジプトでは、太陽神ラーへの薫香として、 日の出と共に焚かれていたのがフランキンセンス、正午の儀式に焚かれていたのがミルラだそうです。
不死鳥(フェニックス)はミルラとシナモンを燃やした灰の中から蘇ったという話もあります。
古代の人々は植物から、その香りから、何を感じ取っていたのでしょうか。
なぜ、朝に焚くのがフランキンセンスで、昼に焚くのがミルラだったのでしょう。

古代の人々は植物と香りと共に生きていたということは知れば知るほど大変に興味深いものです。 今の私たちの生き方に関して何かヒントが隠れていそうです。

(2021.5.10 Loke.)