きっかけと、これからの100年へ

私たちについて


4代目現家主の父はこの家で育ちましたが、私は銀行員であった父の仕事で全国を転々としており、東京で退職をした数年前までは横浜に住んでおりました。
休みの度に祖母の住むこの家に帰り、 「お前は、長男だから、いつかはここに帰ってきて、この家を守るんだぞ。」と言い聞かされていましたので、心のどこかに私も最後に帰るべき家は、故郷の実家という思いがありました。

しかしながら、妻も私も根っからの都会っ子。2人の息子を育て、長く住み慣れた快適な都会生活から一転、冬は極寒で、古く、快適とは程遠い田舎へと今さら移住をしても、、、と定年をすぎてもここに住み家を守ることと、自分の生きがいについてしばらく悩む日々がつづきました。


きっかけと決意


そんな時、2013年にヴィラデストワイナリー玉村豊男さんご夫妻から「蚕室をワイナリーにするとフランスの古いワイナリーみたいで面白いのでは?」と言われたことが大きな転機となります。当初は、ワイン作りへの興味というより、蚕室をワイナリーにすることへの関心を持ったことでした。

大型養蚕農家として建てられた我が家が、ワインに関わっていくことで、この地域の“シルクからワインへ”の流れに貢献できるのでは? 次男家族がしっかり食べていけて、この家を次の世代へと繋げられるのではという思いから、2014年、週末農家として、まずは、メルローの苗木を植えました。

この辺り一帯は、養蚕で栄えた地域で、児玉家の畑の多くも、元々は養蚕の為の桑畑でしたので、日当たりと水はけがよく、ブドウの栽培にはとても適しております。ブドウ栽培は、週末農家でもできるし、冬はお休みと聞いていたのですが、初めてのことに日々、苦労と挑戦の連続でした。毎週の行き来も大変になりましたので、少しづつこの家で過ごすことが多くなり、長野への移住を決意しました。


kodamatei

ブドウの栽培を始めた翌年2015年からは、千曲川ワインアカデミー1期生として、栽培、醸造、経営について学びました。当時
64歳と当時同期生の中では一番高齢で、この年になり、新しいことを習得するのは大変でしたが、夢を大きく持ち、多くを学びました。

kodamatei

ファースト ビンテージの完成


2016年、やっとの思いで迎えた初収穫。収量は537kg。長雨の影響で病果が多く、台風も重なり、収穫自体も1日で終わる予定が2日掛かりでした。早朝から夕方暗くなるまででブドウを収穫し、母と妻が徹夜でひとつひとつ手作業で病果を取り除いてくれました。


初リリース500本は児玉邸の奥深く、4代前にこの家を建てた当主の寝室だった部屋に保管致しました。屋久杉の一枚板を扉にした堅牢で、外気の温度の影響を受けにくい場所です。
先代もまさか自室がワインセラーに使われるとは、想像もできなかったでしょう。

そして2017年 12月、ついにKODAMATEIファーストビンテージが完成しました。
手塩にかけた自分のワインを試飲をしたときは、ちゃんとワインの味がして、本当に感激でした。

翌年2月には、帝国ホテルで開催されたNAGANO WINE FESに出店し、多くのご来場者、ワイン関係者も方々に試飲してもらう機会になりました。そこでは、
「ファーストヴィンテージとは思えない果実味と香り、一番おいしかった!」という多くの嬉しいお言葉と高評価をいただきました。

また、ワイン大国モルドバの大統領ご夫妻が、オリンピックでホストタウンを務める当東御市(とうみし)へお越しになった際に、児玉邸ワインを飲んで頂く機会がありました。大統領を含め皆さまが、「フルーティーな香りに円やかな酸とタンニンでバランスの良いワインだ。」と言ってくださったそうで、今後のワイン造りへの励みとなりました。





これからの100年へ


2018年秋には、次男が次男のお嫁さんの出身地ドイツから、2人の孫娘と共に帰国しました。帰国するとすぐに手付かずだった家のあらゆる箇所を修理、修繕し、長い間放置されていた水田でお米の無農薬不耕起栽培を始め、初収穫で300kgを収穫しました。 なるべく農薬を使いたくないと種ありのシャインマスカットの栽培も始めFacebookでお知らせしたところあっという間に完売となりました。農作業のスピードも速く、ほんとに助かっています。
ワインぶどうの有機栽培にも、とても強い意欲をもっていて、これから始めるワイン畑の開墾も、自分で一から重機を操りながら進めていきたいと話しています。
今後のワインの品種拡大と畑拡張については、我々夫婦もがんばる必要がまだありそうですが、まずは白ワインのシャルドネ、そしてソーヴィニヨンブラン、その次はカベルネフラン(赤ワイン)等々、夢はふくらんでいきます。次男のお嫁さんの出身地のドイツ系の品種も栽培できたら、面白いなぁと思っております。

この先100年のバトンを繋ぐために、いつかは裏の児玉山の斜面をワイン畑にし、蚕室にワイナリーをつくり、家族でワイナリーを経営したいという大きな夢を抱いております。

kodamatei
kodamatei




千曲川ワイン倶楽部


こちらは、私たちが千曲川ワイン倶楽部から取材いただいた際のものです。